「川田文子さんのこと」という桃色の表紙の小さな本がある。自由学園(東京都東久留米市)に通う山澤遥乃(はるの)さんと綾乃さんの双子の姉妹が、19歳だった3年前にまとめた。
主人公の川田文子さんは、自由学園高等科3年だった1944年、学徒動員中に米軍機の空襲を受けて19歳で亡くなった。
姉妹が川田さんのことを知ったのは2018年。自由学園中等科(中学)3年生として授業で学園内の慰霊碑を見て回ったとき、碑に文子さんの名を見つけた。
しばらくして自宅の大家が文子さんのめいであることが、偶然わかった。以来、姉妹は毎年、文子さんの命日に大家の代わりに花を届けた。
ある日、絵の得意な遥乃さんが、小説に登場する独ソ戦の従軍看護師の女性をイラストに描いたのを見て、母は言った。「文子さんのことも描いてみたらどう?」
こうして、姉妹は、高等科(…